夏かと勘違いしそうな暑さと晴れた空の下、山奥の小さな火葬場で、トムくんは灰になった。
ごはんをねだって鳴くこともなくなったが、嬉しくてしっぽをぶんぶん振ることも、もうなくなった。
数日前、帰宅してからすぐに異変には気づいた。しっぽは振っているけれどその場から動かない。動けない。ぱんぱんに張った腹水のせいで。
獣医から定期的にもらっている薬は一週間ほど前から効果がなくなってきていた。膨れるばかりのお腹のせいで、もはや自力で歩くことができなくなっていた。
呼吸も少しずつ荒くなり視点もおぼろだった。もうそんなに頑張れないと感じて、夜冷えのするなか妹くんと二時間ぐらいずつ交替でそばにいて時折体を撫でてあげた。その夜はなんとか乗り切れた。
翌日仕事を早退させてもらい、犬小屋に布団を敷いてトムくんに添い寝をしながら時を過ごした。痙攣や嘔吐を繰り返し苦しみながら、五時間後、一声も発することなく静かにそこから去っていってしまった。体にはまだ温もりがのこっているというのに。
ペットとというものははたして幸せなのだろうか。そんなことを考えた。とくに我が家のように日中は誰もいない家庭の場合、その間何を考えて何を思うのだろう。
言葉が通じる人間同士でさえ意思疎通はままならないのに、他の動物たちの感情を理解することはとても困難だ。だから十分に生きれたんだと信じるしかない。
遺骨は持ち帰って庭のどこかへ埋めよう。
ペットを飼うのはもうやめよう。
二軒隣の飼い犬の声が、やけに耳に痛い。
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