指定された時間にだけ繋がる電話
まとめて返ってくるメール
わかりにくい答え
ずるずると何かにすがっている嫌悪感
適当な会話
たまにするミスだけ上司に見つかる
机の奥に隠した嘘
友だちの友だちは赤の他人
忙しいふりをして歩く
貸したものが返ってこない
仲間はずれがこわい
人間がこわい
同じ状況にあるという馬鹿みたいな安心感
空っぽのシャンプーボトル
誰かの長い髪
誰かの甘い言葉
誰かもわからないアドレス帳
繋がりは弱くて脆い
自分も
世界も
「雪、降ってるよ」
携帯を閉じる 目を閉じる
窓を開ける 目を開ける
大粒の雪が
何度も 何度も降っていた
体に触れえる
確かなものだけが
ここにぼくらを繋いでいる
この雪は積もるだろう
いまじゃなくても
きっといつかは
日付が変わる少し前に家を出た
近くに小さな神社があることを思い出して
ゆったりとした坂道をふたりで下った
白い息が溶けて消える冷たさ
寄り添うほうの肩だけが暖かい
誰もいないだろうと思っていた境内には
驚くほどの人だかりがあって
ちょっとだけテンションがあがる
やばい、大晦日やばい
顔を見合わせながらあやふやな列に並ぶ
みすぼらしいはずの本尊が
いまだけは妙に堂々として見えた
恥ずかしげに始まったカウントダウンが
だんだんとボリュームを上げていく
5・・4・・3・・2・・
終わる
今年が終わる
始まる
今年が始まる
前へ前へと押し出され
いつの間にか目の前の人垣が散っていく
賽銭を投げ入れる
柏手を打つ
頭を垂れて目を閉じる
「どんな願いことしたの?」
階段を下りていく背中に訊く
「うーん。。幸せにする、的な?」
それは願いではなく、誓いでした
ひとりきりでは愛は生まれず
愛だけで愛は続かず
話すだけでは心は知れず
引かれゆく手の強さだけを信じた
あなたが大好き
温かな日差しがここにも落ちてきて
一時の幸せを勘違いしていたんだ
4階のベランダで揺れる眩しくて白いシーツ
自転車を飛ばす子供たちの髪
建設中のマンションの囲い
春が
空が
心が
まだ行く末を決めかねるように揺れて
ここちよくて
いまはただ
世界平和を忘れて微笑んでいたんだ